社長が旅先からひょいと持ち帰ってきた、小さな木製の置き物がああります。
一見すると、丸い輪っかが二つ。
けれどその二つは、別々ではなく、一つの木から繋がったまま彫り出されているそうなんです。
離れそうで絶対に離れない、不思議な仕組みの木の輪です。

社長から聞いた話だと、家具職人として50年の方が、一日一個だけ手作りしているものだそうです。
ヒノキの角材から、機械を使わずに手で彫り込んで仕上げているそうで、すごく時間がかかります。
そして、二つの輪が離れないことから「良い縁(えん)が続きますように」という願いが込められていると聞いて、思わず納得しました。
職人さんは“松葉木工”という屋号で活動していて、家具を作ることが人生そのものになっている人です。
寝るときにも枕元にアイデアノートを置いて、思いついたことを書き留めるほど家具づくりに熱中しているというエピソードを読んで、社長は「こういう生き方っていいなぁ」とつぶやいていました。
それは、利益やスピードや便利さを優先する働き方とは少し違います。
一日に一個しか作れないものは、大量生産もできないし、効率もよくない。
でも、手間と技術と時間をかけて作ったものには、簡単には真似できない価値がある。
その価値は、時間をかけないと生まれないんだと思います。
会社の仕事も、人の採用も、人との関係づくりも、本来はそういうものに近いのかもしれません。
すぐに成果が出ないことの方が多いし、効率だけを見ようとすると、大事なことを置き去りにしてしまう。
“良い縁”は、出会ってすぐ完成するものではなく、時間とともに馴染んで深くなっていく。
社長があの木の輪に惹かれたのは、モノそのものだけではなく、作り手の生き方や姿勢に共鳴したからなのかもしれません。
一つ一つを丁寧に、人と向き合うように作っていく職人の仕事。
それは、私たちの会社がこれから大切にしたいと思っている働き方とも、どこか似ています。
毎日の業務の中で忘れてしまいがちなことを、あの小さな木の輪はさりげなく思い出させてくれます。
良い縁は、急がない。
離れない縁は、手間を惜しまない。
そして時間は、ちゃんと味方をしてくれる。
そんなことを考えながら、今日も会社の机の片隅で木の輪が静かに繋がっています。

